公務員試験ジャーナル

vol.7

作文試験ガイダンス/面接試験ガイダンス

INDEX

1. 作文試験のねらい
2. 作文試験の評価方法
3. 作文試験の出題傾向
4. 作文試験の対策指導
5. 面接試験のねらい
6. 面接試験の形式
7. 面接試験の内容
8. 面接試験の対策指導

1. 作文試験のねらい

作文試験のねらいは、択一式の教養試験(基礎能力試験)や適性試験では測ることできない受験者の人柄やものの見方・考え方、意欲・熱意などを読み取ろうとするものです。学力だけでなく人物重視の採用方針を掲げる傾向が強まっており、重要な合否判定資料となっています。

特に、事務系職種のほとんどの試験では、作文試験が実施されています。作文で落とされる場合もあり得るので、しっかりとした作文対策指導が必要といえます。

2.作文試験の評価方法

作文試験の評価は、一般に複数の採点官によって行われます。A~C等の段階評価で採点されてCが2つ以上つくと不合格という方法や、評価を点数化して他の試験と合計した点数で合否を決定するという方法などがとられています。

採点側のチェックポイントとしては、

①課題の意味を正しくとらえているか

②論旨に一貫性があるか

③段落分けは適切か

④表現はわかりやすいか

⑤文法は正しいか

⑥誤字・脱字はないか

⑦文字は読みやすく、丁寧に書かれているか

⑧制限字数の8割程度は書かれているか

などが挙げられます。

いくら作文の内容が良くても、読みにくい文字や間違いだらけの文章では総合評価が下がってしまいますので、これらのチェックポイントを意識して作文を書くように注意したいです。

3.作文試験の出題傾向

よく出題される作文の課題は、次のように大きく5つのテーマに分類することができます。

①自分に関するテーマ
 受験者がどのような人物であるか、生き方や考え方などをみようとするものです。
 ・学校生活で得たこと     ・友人とのつきあいから得たこと
 ・私が大切にしていること   ・自分が成長したと思えること
 ・失敗から学んだこと     ・自己PR
②将来・抱負・夢などに関するテーマ
 将来の目標に向かって前向きに努力をしているか、どのような将来像をめざしているかをみようとします。
 ・将来の夢   ・5年後のわたし   ・10年後のわたし
 ・私の理想   ・私がめざすもの   ・これから挑戦したいこと
③社会人・公務員についてのテーマ
 社会人・職業人になる心構えや、公務員という仕事への理解、仕事に対する意欲や姿勢、職業観などをみようとします。
 ・社会人として必要なこと    ・公務員になってやりたいこと
 ・私のめざす公務員像      ・公務員に求められているものとは
 ・若者が住みたくなるまちづくり ・公務員を志望する理由と、どのように成長していきたいか
④社会的・時事的なテーマ
 政治・経済・文化など社会全般、時事問題への興味・関心の有無、社会性や常識度、分析力などをみようとするものです。
 ・環境問題について  ・ごみ問題について  ・インターネットの利用について思うこと
 ・高齢化社会について ・最近のニュースで印象に残ったこと  ・少年犯罪の増加について
⑤抽象的なテーマ
 「友情」のように個人的なもの、「責任」のように社会性を持つものなどが出題されます。一般論を求められているのではなく、いかに自分らしさを出せるかがポイントになります。自分の体験などから何を引き出し、導くのか、感性や発想力、理解力をみようとします。
 ・チームワーク   ・思いやりについて   ・達成感について
 ・感動       ・責任感        ・自由について

作文試験の実施時間は45~120分と幅があり、字数についても試験によってさまざまですが、制限時間は50~60分、字数は600~800字程度が多いようです。

志望する職種や自治体の過去の試験内容を調べ、字数・制限時間を確認し、それらを意識したトレーニングを課すことが効率的です。

●2024年度 高卒程度公務員試験作文課題例

試験名 課題 時間 字数
(程度)
国家一般職高卒・税務職員 一つしかないこの地球で皆が暮らし続けられる「持続可能な世界」を実現するために、あなたが心掛けていることを述べなさい。 50分 600字
刑務官 コミュニケーションの中で心掛けていること 50分 600字
裁判所一般職
高卒
「記憶」について 50分
東京都 誰もが「安全・安心」に暮らすことができるまち東京をつくっていくために、東京都職員として私が取り組みたいこと 80分 600〜1000字
特別区 区民の声を聴くことの大切さ 80分 600〜1000字
埼玉県川越市 行政手続きのデジタル化について 60分 800字
香川県警察官 県民から信頼される警察官となるために必要とされる心構えや能力は何か、あなたの考えるところを述べなさい。 60分
4.作文試験の対策指導

作文への苦手意識を持っている生徒は少なくありませんので、練習を重ねることで確実に上達するということを生徒に伝え、まずは作文を書くための基本的なルールに重点をおいた作文指導から始めるとよいでしょう。

【作文完成までの手順】

効率よく作文を仕上げるための手順を学び、書くことに慣れさせることが大切です。100字や200字など少ない字数から始め、徐々に長い文章に取り組ませ、レベルアップを図っていくとよいでしょう。

①課題のねらいを捉える

課題には、必ず意図があります。出題者は何を知ろうとしているのか、まず課題の趣旨を理解させることが重要です。出題の意図を正確に捉えることができれば、何を伝えるべきかを考えることができます。

また、どの課題にも、作文から受験者の人柄やものの見方・考え方を知りたいという目的があることを意識させましょう。

②題材(エピソード)を決める

伝えたいことが採点者に十分に伝わるかどうかは、題材によって大きく違ってきますので、題材選びは大切です。自分が実際に見聞したこと、体験した中で題材として使えそうなものをメモし、絞っていかせるとよいでしょう。

③全体構成を考える

一般的な文章の構成として3段構成(序論・本論・結論)と4段構成(起・承・転・結)がありますが、600~800字の作文では3段構成の形がまとめやすいです。

④作文する

丁寧な文字、誤字や脱字にも注意させて作文を書かせます。

⑤推敲する

読み返す際に、読む人の立場に立ち、上記の「採点側のチェックポイント」を意識しながら読み直させるようにしましょう。

実際の試験では見ず知らずの採点官が読むことを考えると、もし可能であれば、生徒と直接面識のない先生に添削をお願いできれば、より客観的な視点で指導してもらえるでしょう。

当社では、さまざまなテーマを練習できる「作文添削指導」の教材をご用意していますので、ぜひご活用ください。

5.面接試験のねらい

面接試験は、通常は一次試験に合格した者を対象に二次試験で実施されます。筆記試験では測ることのできない受験者の人柄、ものの見方・考え方、心構え、社会性、常識の有無など、人物的側面をみようとするものです。

近年は人物重視の傾向が強まっており、合否において面接試験の占めるウェイトは高まりつつあります。

6.面接試験の形式

主な面接の形式は「個別面接」「集団面接」「集団討論(グループディスカッション)」の3種類で、「個別面接」はほとんどの試験で採用されています。地方自治体や警察の試験では、「集団面接」や「集団討論」を行うところがありますが、「個別面接」と組み合わせて実施されています。

【個別面接】

受験者1人に対して試験官は3~5人程度、時間は15~20分程度が一般的です(資料1参照)。面接官が一人ずつ順に質問していくパターンと、質問をする試験官と観察してメモをとる試験官というように役割分担されているパターンがあります。

内容は、受験者の緊張をほぐすための簡単な質問から始まり、志望動機などの質疑応答が繰り返され、最後に補足的な質問がされて終わるというのが一般的です。

資料1●個別面接室の例

【集団面接】

面接時間は50~60分程度、一組5~8人くらいの受験者に対して試験官3人という形式が多いです(資料2参照)。面接試験中、受験者は便宜的にAさん、Bさんなどと仮称で呼ばれるのが一般的です。

まず自己紹介から始まり、次に学校生活や社会問題など受験者が共通に興味を持つような話題について、一人ずつ順番に意見を求めたり、あるいは挙手によって答えさせたりします。さまざまな質疑応答が展開された後、指名によって補足的な質問がされる場合もあります。他の受験者が答えている間の「聞く姿勢」や協調性もチェックされることがあるので注意しましょう。

資料2●集団面接室の例

【集団討論】

5~8人程度の受験者グループに1つのテーマが与えられ、40~60分程度討論し、グループとしての結論を出すことが求められますが、高卒程度の採用試験で実施するところは多くはありません。

討論の過程を通して、受験者の社会性や集団適応力、発言力、指導力、物事の考え方などがみられます。

7.面接試験の内容

質問の内容は、受験する職種や自治体、個々の受験者によって異なりますが、次のようにベーシックなものが中心です。

①志望動機

②学校生活

③これまでに打ち込んだこと

④趣味・特技

⑤自己PR

⑥最近関心を持った事柄

⑦採用後の希望部署や抱負 など

自己分析とともに志望先の研究を進めておくことが大切です。なぜ公務員になりたいのか、なぜその職種を志望するのかについて考えさせ、志望する職種・自治体については、具体的な仕事内容まで事前に調べておくように指導してください。生徒が最も入手しやすい情報源として、自治体などで発行しているパンフレットやホームページなどがあります。重点的に取り組んでいる施策や直面している課題なども掲載されていますのでチェックさせましょう。

公務員試験では、面接の際に「面接カード」が利用されます。受験者があらかじめ記入するもので、試験官はこのカードを参考にしながら質問を行います。「面接カード」は事前に郵送される場合と(あるいはホームページからPDFデータをダウンロード)、面接の当日にその場で書かされる場合があります。

事前提出の場合は必ずコピーをとり、そのコピーに下書きをしてから提出用に清書させるように指導してください。自分の気持ちや考えを整理してから、読み手を意識して丁寧にわかりやすく書くことが大切です。また、面接当日の発言が「面接カード」の内容と食い違ってはいけないので、記入した内容を忘れないようにコピーをして再読させてください。

8.面接試験の対策指導

【面接指導のポイント】

長年、公務員試験の面接を担当された方によると、公務員としてまず大切な資質は幅広い世代とコミュニケーションがとれることで、特に高卒程度公務員試験で採用された場合、役所における窓口業務に就くことが多いため、老若男女さまざまな人に対して丁寧かつわかりやすい説明ができることは、仕事を円滑に進めるための必須要件だということです。また、国家公務員の場合は、他の官庁等での説明・交渉も必要とされるため、受験者の親世代、場合によっては祖父母世代の人々に対して説明・説得をするためのコミュニケーション能力はベースとなるスキルだとういうことです。

コミュニケーション力を前提として、そのほかに高卒程度公務員に求められる資質として、

①日常業務をテキパキと進める事務処理能力

②相手の要望や問題点を把握できる理解力

③職場を明るくできる対人能力

④メンタル面の強さと忍耐力

⑤素直さ

などが挙げられます。

やや技術的なことになりますが、面接官は職種によって視点を変えて質問・評価していることを踏まえて面接指導を行ってください。

たとえば、事務系職種の場合は相手の立場・状況によって対応を変える柔軟性が求められます。一方、警察官・消防士などの公安系職種では、上司からの命令・規則を遵守する「堅さ」が評価されます。したがって、志望動機などに盛り込むエピソードも、職種に求められている資質をアピールできるようなものを選ぶようにするとよいでしょう。

自己分析をしっかり行い、マニュアル通りの答えではなく、自分の考えを自分の言葉で答えられるようにトレーニングをしておきましょう。

【模擬面接指導】

面接対策指導の中で最も効果的なのは模擬面接です。面接の形式で行うことによって臨場感が増し、面接の緊張感や雰囲気を体験させることができます。まだ社会経験に乏しく面接の経験も少ない高校生は不安を感じている者が多いと思いますので、面接に臨む際の予備知識を教え、何度か練習しておくことが必要です。

入室から着席の手順、身だしなみ、立ち居振る舞い、話し方や言葉づかい、受け答えをする際の声の大きさ、表情や目線のおき方、退室の手順など、マナーを練習させ、自分では気づきにくい癖や課題を指摘してあげることで、改善を図ることができます。基本的なマナーはすぐに身につくものではありませんので、普段から意識させるよう指導していきましょう。

●参考教材●

『自己アピール力をつける 面接ワークブック』

・自分の言葉で表現できる力を養います。

・面接のマナーを「動画」で学ぶことができます。

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