『高校生のキャリアノート』を活用した
進路学習の取組みについて

1. 本校の概要

 本校は、名古屋の中心、名古屋駅から2駅のところにあります。清潔に保たれた校内と充実した学校施設が自慢で、授業中も、部活動や休み時間も快適に過ごすことができます。普通科、総合学科の2学科に約2,000人の生徒が所属しており、「探究の名城」を意識して、様々なカリキュラムを展開しています。20年以上前から、独自の取り組みとして、「探究活動」をスタートしました。未来を生き抜くための学力の向上と、学び続ける姿勢を育むことに主眼を置いたカリキュラムを策定しています。
 平成18年度、SSH(スーパーサイエンスハイスクール)に指定されてから、普通科においてはSS(スーパーサイエンス)、国際、特進、進学の4つのコースを設け、課題研究を中心とした教育課程の開発を主に行い、科学技術系人材育成のための取り組みを行っています。

 

2. 総合学科における「探究活動」の取り組み

 全ての学科・クラスにおいて「探究活動」の時間を設けていますが、本日は、総合学科での取り組みについて紹介します。今回、研究対象とした学年は、令和3年3月卒業生になります。進路先は、9割以上が4年生大学への進学となっています。
 総合学科では、多彩な科目の中から興味・関心のある科目を選択し、体験学習、課題解決型学習によって知識や技能を身につけます。1年次には、企業や上級学校の見学、社会人講話を通じて自分の適性や将来を見つめ、2年次以降は、「系列」に特化した学びを通して興味・関心を深め、進路・キャリア目標の実現を目指します。その中で、つなぐ、つながる、つなげる、をキーワードとして、3つのことに力を入れて運営しています。
 1点目は、総合学科の各学年で学ぶ特徴科目を一本の線でつなぐことです。具体的には、1年次での「産業社会と人間」、「総合的な探究の時間」、2年次での各系列の特徴科目を、3年次の「総合的な探究の時間」に集大成としてつなぐことです(資料1)。2点目は、外部の企業、大学、専門学校、他校、近隣地域などとのつながり、連携を大切にすることです。3点目は、総合学科、総合教科での学びを生徒の進路実現、キャリア実現につなげることです。

▼資料1 各学年での探究活動

 総合学科の目標は、3段階に分け、学年ごとで達成できるように、将来につながるように考えられています。「自分を見つめる」、「興味関心を深める」、「思いをカタチにする」の3段階のステップで、将来生きる力を身につけていきます。
 総合学科では、1年次は共通科目を履修、2年次以降は文系3系列、理系1系列に分かれての探究型学習を進めていきます。
 まず1年次は、入学直後にオリエンテーションも兼ねて、校外でコミュニケーションツアーという行事を行います(現在はコロナ禍で中止)。入学直後にこのコミュニケーションツアーを実施することで仲間づくりをすることができ、高校生活にスムーズに入っていくことができます。
 1年次の特色授業の1つは「産業社会と人間」です。『高校生の進路ノート』を活用した、研究対象科目です。同じく1年次の特色授業の1つに、「総合的な探究の時間」がありますが、2年次からの系列選択の参考になる1つの授業として、系列のお試し体験をローテーションで行います。
 そして2年次より、文系3系列、理系1系列の中から希望系列に分かれてクラス編成がなされ、各系列で特徴科目が展開されていくことになります。
 系列の紹介です。まず、文系3系列の1つ、「社会探究系列」についてです。問題解決能力や発信力をはじめ、これからの社会で求められる力を養います。「社会探究系列」の特徴科目は、2年次の「探究入門」、3年次の「探究実践」です。ディベートやNIEスクラップマラソンなどを行い、学外の懸賞論文、コンテストなどに出場しています。
 「地域交流系列」については『進路ノート』を活用した研究対象科目系列になりますので、後ほど説明させていただきます。
 続きまして「ビジネス系列」です。ビジネスの現場で役立つ知識や技術の習得を通して学力の向上を目指します。特徴科目の1つである簿記を通して資格取得をし、それを武器に進路実現を達成していくことになります。
 続きまして「数理系列」です。唯一の理系系列になります。観察、実験、ものづくりなどの実技を通じて、自然事象を科学的に考察する力を養います。「数理系列」だけは、普通科の理系とカリキュラムがほとんど相違ないようにできています。内部推薦の理工学部への挑戦が含まれているからです。
 また、普通科、総合学科合同で1、2年生だけですが、年度末に「探究Day」と称して、1年間学んだ「探究活動」の成果発表の場を設け、学年の壁を超えて1,200名くらい、全員で合同探究活動を実施しました。このイベントは、各クラスから選出された実行委員が事前準備から当日の運営まで全て行いました。各グループは、学年、コース、系列の混在で構成されます。220のグループに分かれて始まったアイスブレイクの時間には、2年生の指導のもと自己紹介を行い、盛り上がっていました。その後、基調講演を受けてグループディスカッションが始まり、与えられたテーマに対して事前に調べてきたことを各自が想いを込めて伝えました。中には議論が白熱したグループもありました。
 2日目の発表では2年生を中心に、元気よくグループ活動の報告をしている姿に感銘を受けました。2年生は上級生らしくリーダーシップを発揮し、1年生を引っ張ってくれました。1、2年生の縦のつながりと絆が深まり、充実した1日となっただけでなく、この活動を全校生徒で実施したことによって、「探究の名城」を強く印象づけたと考えています。

▼資料2 MEIJOの探求Day

 

3. 『進路ノート ベーシック』の活用 ~「産業社会と人間」での取り組み

 『進路ノート』を利用して実践した2つの科目について説明します。1つ目は、1年次で学ぶ「産業社会と人間」で、キャリア教育の一端を担う、総合学科の特徴科目です。この科目を通じて、将来にわたって生きる力を身につけていく内容になっています。『高校生の進路ノート ベーシック』を参考にして、年間予定を組んでいます。
 1学期は「自分を知る」と「上級学校を考える」時間に費やし、2学期は「職業を知る」と「社会を知る」に時間を費やしています。7月16日には5大学6キャンパスに分かれて大学見学会を実施しました。実際に大学キャンパスに足を運び、大学生活についてお話を伺うことで高校と大学の違いを考えるきっかけとなりました。
 10月29日に実施した「職業人訪問」では、5人1組のグループに分かれて約30社を訪問しました。コロナの影響で受け入れ先が少なく、なんとか30社まで受け入れてもらうことができました。この活動は、今後も続けていきたいと考えています。3学期は「社会を知る」と「未来予想図をつくる」時間に費やしています。
 『高校生の進路ノート ベーシック』『自分を知ろう』から『未来予想図をつくろう』までを参考に年間プログラムを作成し、各プログラムの振り返りには本校オリジナルノート(資料3)などを提出することで評価をしています。この授業は進路・キャリア実現におおいに影響していると思います。

▼資料3 オリジナルノート

 

4.『進路ノート スタンダード』の活用 ~「地域交流系列」での取り組み

 続きまして、「地域交流系列」の事例です。該当科目は、2年次での「地域交流I」、3年次での「地域交流II」です。取り組みを通じて、進路実現やキャリア実現の武器を身につけていきます。具体的には、近隣地域の保育園や介護施設を訪問したり、町内会と合同行事を実施するなど、幅広い世代の方々と交流をする実践的・体験的な授業です。交流の中で相手方の役に立つことに喜びを感じ取り、コミュニケーション能力や思いやりの心を養っています。
 2年次の「地域交流I」と3年次の「地域交流II」の大きな違いは、2年次では教師から交流場所を生徒に提案し、クラス全体で交流に行っています。3年次になると、決められた相手先ではなく、グループを作り自分たちで交流相手を見つけていくことになります。過去には障害児施設や病院、小学校、保育園と交流しました。他にも町内会の方と一緒に高校内に畑を作ったり、最近は飲食店と一緒に商品を企画して販売をしたり、色々なところに交流に行って、自分たちの将来のキャリアの糧にしていく生徒が多く見られます。
 『進路ノート スタンダード』の大部分は1年次での利用で効果が表れており、2年次で残りの一部を利用させていただきました(資料4)。利用させていただいたことによって得た成果は後ほどまとめの中で説明させていただきます。

▼資料4 『進路ノート スタンダード』の活用

 

5. まとめ

 それでは、成果も含めてまとめに進みます。
 まず1年次での「産業社会と人間」では、「進路ノート ベーシック」の構成のおかげでキャリアプランニングを意識でき、2年次以降の自分自身の過ごし方を現実的に捉えることで、将来のビジョンをしっかりと描くことができています。
 2年次、3年次の「地域交流系列」では、多種多様な施設との交流を通して、生徒たちの将来の進路選択の幅が広がりました。また、『進路ノート』を机上で実施したことにより、仲間と共有することの大切さを事前に学び、保育園など交流先での実践の場において、コミュニケーションをとる姿勢が以前に比べて良くなったという変化が現れました。
 交流を通じてコミュニケーション能力を高めることによって、将来、社会での人間関係の希薄化の防止につながります。また、ほとんどの生徒が交流体験を将来の自分自身の進路選択の際の、総合型入試や学校推薦型入試のアピール材料にするなどして、役立てています。
 「進路ノート」を活用することで、総合学科の特徴科目である「産業社会と人間」や「地域交流系列」の特徴科目である「地域交流I・II」など、3年間の全ての科目がつながっていることを実感できるようになりました。進路選択やキャリア教育の一助になっていることは成果としてあげられると考えています。また、将来社会に出た時に活躍するための生きる力を身につけて卒業できることも成果と言えると考えています。
 一方、今後の課題としまして、「地域交流系列」を含め、総合学科全体において活動がマンネリ気味になっていることです。この雰囲気を払拭しなければならないと考えています。より多彩な方面や手法で交流相手の幅を広げていかなくてはならないと考えています。また、新カリキュラムの実施による授業時間の減少に伴い、交流の時間が減ってしまい、活動の一部を授業時間外に行わなければならなくなっています。それでも多くの連携先と交流するとともに、それぞれの連携先との交流内容の質を落とさずに維持、向上させていきたいと考えています。
 最後に、これからも中学生から、子供たちから選んでもらえるような学校を目指したいと思っています。入学してきた生徒たちが卒業時に「名城」で良かった、「総合学科」で学んで良かったと笑顔で満足してもらえるよう、魅力づくりをしていきたいと考えています。

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