『高校生のキャリアノート』を活用した
キャリア教育の実践

■ 本校の概要

 明治42(1909)年に創設された坂井郡立女子実業学校と大正11(1922)年に創設された福井県立三国中学校を前身とする創立110年を迎える歴史と伝統を誇る学校です。校歌の歌詞は著名な詩人、三好達治の作で、「心高かれ」という本校の校訓はこの校歌からとられています。「心に志を持ち、それを実現するための惜しみない努力を重ねる。」「一人の人間として充実した生き方を目指すだけでなく、人々の幸福と平和や人類の未来を視野に入れた生き方を目指す。」という2つの意味が込められた高邁な精神に基づいた校訓です。現在、普通科単独校となり、1学年から3学年まで合計16学級の構成となっています。教育課程は、1年次では必修科目を中心に共通のカリキュラム、2年次からは進路別に4つの類型のカリキュラムを展開しています。国公立大学への進学希望者から就職希望者まで、それぞれにきめ細かな指導を行い、生徒一人ひとりの個性に応じた多様な進路実現に力を入れています。文Ⅱ系列では2年生から人間福祉コースとソフトウエアコースを設け、専門科目を学び専門知識と技能を修得することで、福祉・医療・保育系およびコンピュータ関係の進学や就職を目指しています。特に人間福祉コース選択者は、介護職員初任者研修の資格を取得しています。部活動は運動部・文化部ともに盛んで、中でも女子ソフトボール部、吹奏楽部の活躍には目を見張るものがあり、大きな存在感を示しています。そのほか、柔道部・陸上部・ヨット部などが北信越大会へ進出し、写真部・書道部などが上位大会への進出を果たすなど、積極的な活動で成果を上げています。卒業生の進路状況は、地元の福井大学・福井県立大学をはじめとした大学・短期大学への進学者が6割、専門学校への進学者、公務員を含めた就職者がそれぞれ2割となっています。

 

本校のキャリア教育(進路指導)

 本校のキャリア教育の流れは、次の通りです。2学年までは国公立大学への進学を視野に全員五教科の指導、3学年からは進路別に応じた指導を行い、進学から就職まで幅広い進路希望に対応したきめ細やかなキャリア教育(進路指導)を心がけています。
 キャリア教育の取組みの特徴としては、次の2点が挙げられます。

① 「地域に密着した高校教育」として、職場見学、職場体験、インターンシップなど、他校種や地域・産業界等との連携・協力を主体的に図り、組織的・系統的にキャリア教育に取り組んでいます。

② 地元企業や自治体等と連携し、「地元坂井市のまちづくり」について市政に対する提案を行い地域課題の解決に取り組むなど、生徒の地元への理解・愛着・誇りを育む教育を積極的に取り入れています。

〈平成29年度 福井県立三国高等学校進路指導部 年間計画〉

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■ 『高校生のキャリアノート』を活用したキャリア教育の実践

1 『高校生のキャリアノート』を活用したキャリア教育の実践概要

 「総合(総合的な学習の時間):火曜日7限目」等を使って、2学年から3学年にかけての2年間、担任と副担任が協力して実施しました。単発的な取り扱いではなく、「総合」の単元の中での関連性・系統性を持たせました。

NO 実施学年と実施時期 高校生のキャリアノート項目 関連項目
1 第2学年
平成28年 4月26日
9.レッツスタート高校2年生 高校生活
2 第2学年
平成29年 2月7日、14日
  21日、28日
  3月15日
17.仕事選びのステップ 進路探究講座
3 第2学年
平成29年 2月7日、14日
  21日、28日
  3月15日
18.学校選びのステップ 進路探究講座
4 第3学年
平成29年 9月12日
19.自己PRスキルズ 自己PR
5 第3学年
平成29年 10月24日
25.「働く」を守る 社会を知る

 

キャリアノート表紙1
キャリアノート表紙2
キャリアノート表紙3
キャリアノート表紙4
キャリアノート表紙5

 

2 進路探究講座における実践

(1)進路探究講座の概要

 『高校生のキャリアノート』の〈テーマ17.仕事選びのステップ〉および〈テーマ18.学校選びのステップ〉等を使用して、クラスを解いて進路志望別の講座(6講座)に分かれて進路決定に生かすために進路探究講座を実施しました。進学希望者は「成長できる第1志望校を選ぶ」を目標にして、『キャリアノート』のWORKを進めながら第1志望校の情報を収集・整理して、B4判の「第1志望校ポスター」を作成し、発表しました。就職希望者は、「成長できる第1志望先を選ぶ」を目標にして、同じく『キャリアノート』を活用しながら第1志望先の情報を収集・整理して、B4判「第1志望先ポスター」を作成し、発表しました。進路探究講座の概要は、次の通りです。

進路探究講座実施概要

 1 実施期日 平成29年2月7日(火)、14日(火)、21日(火)、28日(火)の7限目の総合および3月15日(木)3・4限目

 2 ねらい

  (1)大学・短期大学講座/専門学校講座

     学校選びの具体的な手順について知り、志望校を選定し、志望校についての情報を収集・整理して、進路決定に生かす。

  (2)就職講座

     仕事選びのポイントや就職スケジュールについて知り、志望先を選定し、志望先についての情報を収集・整理して、進路決定に生かす。

 3 単元計画

  (1)大学・短期大学講座

第1次 「大学発見シート」

第2次 〈18.学校選びのステップ〉WORK1、WORK2、WORK3

第3次 第1志望校ポスター作成、(〈18.学校選びのステップ〉の補完)

第4次 第1志望校ポスター発表準備、〈18.学校選びのステップ〉やってみよう

第5次 発表会

  (2)専門学校講座

第1次 学校調べ(コンピュータ室)

第2次 〈18.学校選びのステップ〉WORK1、WORK2、WORK3

第3次 第1志望校ポスター作成、(〈18.学校選びのステップ〉の補完)

第4次 第1志望校ポスター発表準備、〈18.学校選びのステップ〉やってみよう

第5次 発表会

  (3)就職講座

第1次 〈17.仕事選びのステップ〉WORK1、WORK2、WORK3

第2次 志望先調べ(コンピュータ室)志望先の求人票を確認

第3次 第1志望先ポスター作成、(〈17.仕事選びのステップ〉の補完)

第4次 第1志望先発表準備、〈17.仕事選びのステップ〉やってみよう

第5次 発表会

 4 準備物

  (1)大学・短期大学講座

①キャリアノート〈18.学校選びのステップ〉  一人1部

②大学発見ナビ               一人1部

③大学受験カタログ             一人1部

④大学発見シート              一人1部

⑤上質紙B4判                一人1部

⑥各学校の案内              各自で準備

  (2)専門学校講座

①キャリアノート〈18.学校選びのステップ〉 一人1部

②上質紙B4判                一人1部

③各学校の案内               各自で準備

④全国専門学校総覧 平成26年度版〜平成29年度版各1冊計4冊

  (3)就職講座

①キャリアノート〈17.仕事選びのステップ〉 一人1部

②上質紙B4判                一人1部

③求人票                  一人1部

④就職説明資料               一人1部

 

  〜以下省略〜

 教師用『授業サポートガイド』の指導方法を参考にして、講座ごとにガイダンス資料及び生徒の実態に合った学習指導略案を作成し、進路探究講座を実施しました。実施に当たっては、教員が指導しやすいように、また生徒が取り組みやすいように工夫しました。

サポートガイド17
サポートガイド18

〈ガイダンス資料①の例〉

(2)具体的な取組状況

〈本時の展開 ※教師用『授業サポートガイド』も参考にして実施

●大学・短期大学講座

第1次「大学発見シート」
 情報雑誌を使って、高校卒業後の進路を具体的に考えていく必要性を説明し、大学発見ナビの「成長できる志望校をみつける」「将来につながる志望校を探そう」を実施しました。
第2次〈テーマ18. 学校選びのステップ〉
 キャリアノート〈18.学校選びのステップ〉WORK1を実施した後、各自の準備した学校案内を読み取り、WORK2を実施しました。4人で1グループを作り、グループ内でWORK2の記述内容を踏まえて、第1志望校について発表し、他の生徒からのコメントを得ました。その後、WORK3のQ1を実施しました。
第3次 第1志望校ポスター作成
第4次 第1志望校ポスター発表準備

〈作成した「第1志望校ポスター」〉

 発表に当たっては、「進路探究講座発表 評価シート」を用いて、チェックリストやルーブリックによって、しっかりとした自己評価および相互評価を行えるように工夫しました。

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評価シートへの記入

 発表を聞いて記入した評価シートを発表者に渡します。発表者はもらった評価シートおよび自己評価シートを基に、自分の発表を振り返りました。

●専門学校講座

第1次 「学校調べ」
第2次  〜第5次までの活動は、大学・短大講座と同じ活動。

〈本時の展開 ※〈授業サポートガイド〉も参考にして実施

●就職講座

第1次 〈テーマ17. 仕事選びのステップ〉
 「就職説明資料」で、本校の就職状況および「就職のポイントの説明を聞いて、「求人票」を用いて、「求人票」の見方のポイント説明を聞きました。

 〈17. 仕事選びのステップ〉のWORK1を実施し、仕事を選ぶ4つの視点について理解しました。  4人で1グループを作り、グループ内でWORK1の記述内容を踏まえて、仕事を選ぶ上での重視する項目について発表し、他の生徒からのコメントを得ました。その後、のWORK2を実施して、求人票から仕事を読み取りました。WORK3を実施し、仕事選びのステップを理解しました。

第2次 志望先調べ(コンピュータ室)志望先の求人票を確認

第3次 第1志望先ポスター作成、(〈テーマ17. 仕事選びのステップ〉の補完)

第4次 第1志望先発表準備、〈テーマ17. 仕事選びのステップ〉やってみよう

第5次 発表会

(3)『高校生のキャリアノート』生徒が記入した実例

〈テーマ18. 学校選びのステップ〉

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〈テーマ17. 仕事選びのステップ〉

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(4)進路探究講座のアンケート結果(一部)

 平成29年3月15日(木)実施 集計総数 182人
 ①「学校選びのステップ」又は「仕事選びのステップ」の冊子は、進路を考える上で役に立った。

(5)進路探究講座の感想

●今回の進路探究講座で、改めて進学先の大学についていろいろな方法で調べたが、その中で本当に一番進学したい学校を決めることができなかった。早く進学したい大学を決めて、進路実現に向けてがんばれる状態にしていかなければいけないと思った。(大学・短期大学講座)

●自分が調べた学校と同じ学校を調べた人の発表を聞くことで、自分が調べたときに気づかなかったことに気づくことができた。また、他の学校の発表を聞くことで自分の進路先を考える視野を広めることができた。(専門学校講座)

●就職するために、自分が持っている知識の少なさがよく分かった。自分の将来をよりよくするためにも、就職についてもっと調べておく必要があると思った。このような機会があるとよいと思った。(就職講座)

 

まとめ

 今回の進路探究講座は、主体的・対話的で深い学び(アクティブ・ラーニング)の視点からの授業改善を行うように計画しましたが、『キャリアノート』を有効的に使用することで授業改善ができたと考えます。特に、第2学年3学期の進路探究講座(6時間)で使用した〈17.仕事選びのステップ〉〈18.学校選びのステップ〉は、とても効果がありました。生徒のアンケート結果や感想からわかるように、生徒たちは主体性、創造性、協同性を発揮し、試行錯誤しながら学習に取り組んだことで、自己の在り方や生き方を深く考える機会となりました。年度末に発表会を実施したため十分な時間が確保できず、パフォーマンス課題の評価を十分に実施できなかったところが課題となっています。
 教師用『授業サポートガイド』は、指導方法が具体的に例示されていて教員同士が共通理解を図りながら授業を実施していけるという点でとても有益でした。
 「本校の生徒の社会的・職業的自立に向けてどのような力を身に付けさせるのか」という問いに向き合い、そのために意識して行う教育活動は何かを整理し、関連性・系統性を持たせて、学校教育全体を通じ、組織的かつ計画的なキャリア教育を実践していきます。さらに実践した教育活動を生徒の変容を見取ることで評価していきます。そして教育活動の点検・改善を行っていきます。このPDCAサイクルを円滑に進める仕組みづくりを構築していくことによって、これからも、一人ひとりが主役になれる三国高校を目指して日々の教育活動におけるキャリア教育の推進を図っていきたいと思います。

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