進路指導にキャリアノートを活かす
栃木県立宇都宮商業高等学校

 栃木県立宇都宮商業高等学校は、昭和24年、当時宇都宮市内にあった市立と県立の商業高等学校2校が統合され、開校した。「情操豊かでたくましさと創造力をもつビジネスリーダーを育成する」という教育目標に基づき、多様化する時代のニーズに対応したコースを持つ商業科・情報処理科の2学科を設置している。
 商業教育の質の保証と卒業後の進路保証のため、商業に関する様々な資格取得を推奨してきた結果、平成27年度は、全国商業高等学校協会主催各種検定試験3種目以上1級表彰制度において卒業生の97.8%が表彰された。3種目以上1級表彰生徒数で全国においてトップレベルを維持し、その取得率では、ここ数年、日本一という大きな成果を収めている。

 

■ 本校の特色

 本校は、全日制の商業科5クラス、情報処理科2クラスと、定時制の普通科、商業科を設置しています。栃木県の中心地にあり、県内の商業教育推進高校という役割を担っています。
 平成20年度より、これまであった学科ごとのコース制をさらに充実させ、全日制商業科は1年次で〈ビジネス総合コース〉と〈ビジネス進学コース〉を新設しました。また、2年次には、〈ビジネス総合コース〉は〈キャリア系列〉と〈アドバンス系列〉の二系列を、〈ビジネス進学コース〉は〈アカウンティング系列〉と〈イングリッシュ系列〉の二系列を新設し、生徒の進路希望に応じて選択できるようにしました。さらに、平成17年度から本校の教育目標に沿って、生きる力を育成し、進路実現や生徒の将来にわたる自己実現を支援するため、「共に学びあい励ましあう学習活動」を7限目に設定しました。
 定時制においては、社会の急激な発展により産業及び就業構造が変化し、定時制をめぐる環境にも著しい変容をもたらしているため、社会の構成員であることを自覚させ、円滑な社会参加ができるように指導を行っています。定時制教育を活性化させ生徒に希望をもたせるため、宇都宮高校通信制、学悠館高校通信制との併修による3修制や、高等学校卒業程度認定試験、実務代替等による単位認定等を実施しています。また、社会の要望に応えるため、生涯学習の一環として、商業科第3年次編入制度(経理コース)も開設しています。

 

■ 生徒一人ひとりの能力を発揮させるために

宇商_総合的な学習の時間全体計画

総合的な学習の時間全体計画
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 入学当初から卒業まで、3年間を見通したきめ細かいキャリア教育を実施しています。生徒の希望をしっかりと把握した上で、さらにワンランク上の目標を達成できる指導「To-Plan」…Together,Tomorrow Plan(みんなで未来のために頑張ろうという意味)を実施しています。「To-Plan」は、生徒の学習意欲を高め、個々の進路実現を援助する目的で、毎日7限目に開設しています。1・2年生は主に商業の資格取得のための学習時間に、3年生は自己の進路実現に向けての学習時間に充てています。この時間の活用により、進路状況や資格取得率の向上など飛躍的によい結果が得られるようになりました。この取り組みは、「就職にも進学にも強い宇商」の原動力になっています。
 その他、就職指導においては、「地域から信頼される人材の育成 就職内定率は100%」を目指し、将来の地域経済に貢献できる実践教育としてキャリア意識の高揚をはかる行事や、インターンシップ・ビジネスマナー講習・外部講師による進路講話などを計画しています。進学指導においては、「一人ひとりの可能性を伸ばす進学指導」を柱に、専門高校の特徴を活かしたカリキュラムを取り入れ、さらに進学や課外授業として、模試や講座、学習合宿などを実施しています。
 さまざまな取り組みを行っている中で、生徒の進路意識の高揚や、大学進学を希望する生徒の基礎学力の向上などは大きな課題となっています。なかでも就職・進学希望のどちらにも重要な作文・小論文対策は、生徒も指導者も共に苦慮している現状があります。

 

キャリアノートの活用

 これまで行ってきた取り組みにおける課題を勘案し、生徒の進路に対する意識付けや、適性の自己分析、就職・進学の試験に備えることを目的として、『キャリアノート』を活用した進路指導を計画しました。

○対象生徒:3年生

○使用するキャリアノート
 19. 自己PRスキルズ…2時間
 23. 進学・就職 合格文章術 志望理由書の書き方…4時間

○指導する時期と時間:1学期の7時間目To-Plan

○指導者:クラス正・副担任 

■目標

1. 就職希望者

・自己PRを盛り込んだ志望動機を、履歴書に書くことができるようにする。
・過去の求人票を参考にして、志望企業を3社選び、できれば3職種まで書く。
 例:A社の事務職・B社の技能職・C社の販売職等

『キャリアノート』《テーマ19.自己PRスキルズ》

テーマ19表紙
p2
p4
p6

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2.進学希望者

・進学希望先に提出する志望理由書を、自己PRを盛り込んで作成できるようにする。

『キャリアノート』《テーマ23.進学・就職 合格文章術 志望理由書の書き方》

テーマ19表紙
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■3学年担任との打合せ

週1回実施の「進路部と3学年担任との打合せ」の時間を活用して、下記のような連絡書を作成し各担任へ依頼した。

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まとめとこれからの課題

まとめとこれからの課題 画像

 今回は、『キャリアノート』《テーマ19. 自己PRスキルズ》と《テーマ23. 進学・就職 合格文章術》を活用しましたが、このようなノートは3年間を通して体系的に扱うことが理想だと感じました。しかし、すでに長年の経験から作りあげられた計画がある状況に新しい試みを取り入れるのは困難な現状があります。それでも生徒指導に直接あたる担任が、「実施してよかった」と思える取り組みは、できるだけ多く取り入れることを常に念頭に置いて検討していきたいと思います。
 『キャリアノート』《テーマ19. 自己PRスキルズ》と《テーマ23. 進学・就職 合格文章術》は、進路希望が決まっている生徒が取り組むための「ねらい」が明確で、成果も期待できます。ですから、進路希望が確定してからこのテーマに取り組むことが、最適な学習時期であるといえます。よりスムーズに活用するためには、2年次までに進路希望が決定できていることが望ましく、担任からの面接指導や保護者からのアドバイスなどで、生徒をしっかりサポートできる体制を進路指導部では作っていきたいと思います。
 さらに、『キャリアノート』を活用した指導の効果をアップさせるためには、担任の意識・技術の向上と、担任の事後指導が肝要です。担任のスキルアップには、進路指導部の担任対象の研修が欠かせませんし、均一な指導を目指すには、進路指導部のリーダーシップも求められます。今後も、より望ましい進路指導を、学校全体で取り組むことができるような体制作りを目指していきたいと思います。

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