再編と進路指導〜キャリアノートを使って〜
徳島県立吉野川高等学校

徳島県立吉野川高等学校 吉野川高等学校は、吉野川南岸に位置する鴨島商業高等学校と北岸の阿波農業高等学校が再編統合され、平成24年に開校した。敷地には吉野川をはさんで校舎と実習農場があり、商業科3学科と農業科2学科が設置されている。鴨島商業高等学校と阿波農業高等学校が培ってきた教育を継承し、商業科と農業教育併設のメリットを生かした特色のある教育が行われている。

 

特色ある教育

徳島県立吉野川高等学校の池北理香教諭

 本校は、商業科〈情報ビジネス科〉〈食ビジネス科〉〈会計ビジネス科〉3学科と農業科〈農業科学科〉〈生活活用科〉の2学科が設置されています。商業科の生徒は、起業家、経理業務従事者、商業系大学への進学、を目指し、農業科では、農業技術者の育成やフラワー装飾技能士、農業系大学への進学、を目指して学習に励んでいます。昨年は、〈生活活用科〉が出場した押し花アートの全国大会において最優秀を受賞しました。
 農業科であっても〈ビジネス基礎〉〈情報処理〉の商業科目を、商業科でも〈生物活用〉〈食品製造〉の農業科目を学習することができる「学科の枠を超えた総合選択制」は、本校ならではの特色といえましょう。また、毎日スクールバスで向かう学校農場において、農産物の生産から商品開発、販売までの一連の活動が学べる「6次産業化の学習」など、商業科と農業教育併設のメリットを生かし、さまざまな取り組みを行っています。さらに、専門高校生として、卒業までに多くの資格を積極的に取得しています。

 

大きな3つの進路目標

徳島県立吉野川高等学校の年間計画
徳島県立吉野川高等学校 年間計画
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 進路状況は、就職希望者が全体の6〜7割で、そのうち7割が製造業を占めています。また、進学希望者の半数は専門学校へ進学しています。
 統合再編にあたり、開校の2年前から両校の進路指導部会で検討を重ね、大きな3つの進路目標を設定しました。

1.生徒一人ひとりの勤労観・職業観の育成を図るとともに、
 将来の目標を明確にさせる。
2.個に応じたきめ細かな進路指導を徹底する。
3.進路開拓を推進し、進路先の確保に努める。


 この目標に対する具体的な取り組みとして、生徒にさまざまな角度から考える視点を与え、意識を高めるために、働くことの意義や社会人としてのあり方を学ぶガイダンス・集会の実施、インターンシップ・会社見学を推進しています。また、保護者会や個別・三者面談において進路目標を明確にすることを促しました。さらに、進路指導のあり方や、進学指導・就職指導の方針や流れを把握する等の教員研修を重ね、HR活動を通じた個別面談やビジネスマナーの授業実践、1年間の流れを把握させる「進路の手引き」を作成しています。教員は、就職先を確保するために、年間200社以上の企業を訪問し、採用担当者と面談を行います。企業の採用担当者から直接話を聞くとことは、教員にとっても実践的な研修の機会となっています。

 

本校の進路指導

 新しい高校として進路指導を充実させるために、まず、3部屋ある進路資料室の改善を行い、生徒が進路に関する情報を得やすい環境を整えました。パソコン2台を設置したことにより、生徒が自由に閲覧、調べ学習ができます。また、深刻な悩みをもつ生徒が多いため、相談室をブース形式にしました。このことで個別相談に応じることが可能になり、来訪率があがりました。

パソコン2台設置
相談室

〈具体的な取り組み〉
①基礎学力を高める
 朝学習におけるドリルの活用
 適性検査をとり入れた補習の実施
②勤労観や職業観を高める
 進路講演会の開催と企業見学・インターシップの取り組み、
 体験型進路ガイダンスの実践
③就職・進学試験に向けた指導の充実
 「就職ガイダンス」の実践、校内管理職面接、就職激励会、
 指定校進学説明会の実施
④キャリアノートを使って就職活動の実践力を高める
 『高校生のキャリアノート』の活用
⑤他課との連携強化
 生徒指導課との連携による挨拶・遅刻指導や服装・
 マナー等の指導人権・相談課との連携による保護者との
 関係作りや学習支援、外部関係機関とのサポート体制の整備
⑥校内選考基準の見直し
 3年間の学校生活全般を評価するために、
 「部活動」「資格」「出席状況」「課題テスト」
 「定期考査」の5項目について点数化

 

『高校生のキャリアノート』の活用

 3年生の1学期から夏休みにかけて、履歴書作成や面接指導全般の指導をしました。9月には最終段階として、しっかりと自己PRができるようになるため、『高校生のキャリアノート』の〈テーマ19 自己PRスキルズ〉を3年生全体で実施しました。

自己PRのための自分分析1

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○テキスト 自己PRスキルズ
○目的就職採用試験を目前に、面接試験対策の最終仕上げとして。
しっかりと自己PRができるようになるため。
○対象3年生全体
○時期9月初旬
○内容WORK2 自己分析、WORK3 自己PR文、
WORK4 面接トレーニング(2人1組)
○授業後教員・生徒によるアンケートで、分析する
○課題テキスト活用方法などの見直し


 事後アンケートでは、生徒からは、「自分を改めて知ることができた」「自分を客観的に見直すことができたので良かった」などの感想が多く、教員からは、「自分の長所に対して、エピソードを聞くと答えられない生徒が多かった」「自己PRをもう少し早い時期に時間をかけて取り組みたい」という希望が多かったと思います。このことは次年度に生かしていきたいと思います。
 また、全体を通して好印象だった点についての質問には、「〈自己PR文〉のところではテキストの文章の作成方法がわかりやすく、生徒自身の中にも「書き方がわかった」と気づきを与えることができた」と回答がありました。
 授業を振り返り、教員からは、「しっかり生徒たちに考えさせる時間が必要」「活動前に"集中すること"を徹底させる必要がある」などの感想があげられました。テキストの活用時期、時間配分、授業の進め方など、今後の検討課題にしたいと思います。

自己PRのための自分分析2

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自己PRのための自分分析1

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今後の課題

 今後の課題としては、以下の3つに重点を置きたいと考えております。

1.校内研修の充実
研修の充実をはかり、教職員の進路指導の力量を高めるとともに、進路指導のシステムを構築する。また、進路を意識した日常の指導を大切にする。

2.本校の特徴を明確に打ち出し実践
生徒指導と進路指導を両輪とし、学校をあげて〈自ら挨拶をする〉〈すすんで掃除をする〉〈素直な心で物事をとらえ、行動する〉ことを「吉野川スタンダード」とする。
3.進路ニュースの発行
全校生徒にさまざまな情報を発信し、早くから進路目標を設定するなど進路意識を高める。

今後の課題

 3年目を迎える本校は、待ったなしの進路指導がまた始まります。この重点課題は、地道にPLAN・DO・SEEを繰り返し、他課としっかり連携をとり、頑張っていきたいと思っております。また今後は『キャリアノート』を導入する時期や方法をしっかり計画し、生徒たちの意識を高めるために、幅広く活用していきたいです。


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